2010年5月13日木曜日

ワールドカップとナイキやアディダスの話など

サッカー、南アフリカ・ワールドカップが近づいてきましたね。
日本代表の岡田監督は頭が堅くてモダンサッカーの戦術を理解していない人なので、選ばれたメンバーは首を傾げたくなる人が多数入っていましたが、三戦全敗と予想する人が多数いるということは、それだけ目の肥えたサッカーファンが多数いるということですから、そこがせめてもの幸いかと思います。
しかし、これからワールドカップが始まるということは、あらゆるメディアでナショナリズムが発揚されるということでもあるわけですから、これは鬱陶しいかぎりです。鬱陶しいといえば、ナイキのロゴマークがこれまたあらゆる場所で目に飛び込んでくることでしょうか。
そのナイキと契約するナショナルチームが増えてきたのは98年のワールドカップ予選の頃からですが(オランダ、ブラジル、韓国など。当時はイタリアまでがナイキ)、その頃からユニフォームはナイキとアディダスがやたら目立つようになりました。個性的なメーカーのものが姿を消し、色が違うだけでほとんど同じデザインのチームが多数を占めると、ユニフォームのデザインをみる楽しみがなくなるだけではなく、なんだかファッショ的な雰囲気さえ感じてしまいます。94年のイタリア代表が契約していたディアドラのユニフォームが非常に洗練されたデザインだったので、当時ポロシャツのような感覚でオシャレ着としていた人がたくさんいたことが懐かしくさえ思われます。現在はナイキ、アディダス、プーマ、アンブロの4社でほぼ寡占ですが、アンブロはナイキに買収されたので事実上、3社による寡占ですね。因みにアディダスとプーマはもともとダスラー兄弟商会という一つの会社だったのが、経営者のアドルフ・ダスラー、ルドルフ・ダスラーという兄弟が喧嘩して二つに分裂したもの(アドルフがアディダス、ルドルフがプーマ)。それ以後、アディダス、プーマの敵対関係がずっと続いているというわけです。アディダスがFIFAと癒着関係にあり、ナイキと同様、強豪国との契約やスター性の極めて高い選手との個人契約が多いのに対して、プーマはアフリカ諸国やマラドーナをはじめマスコミから「問題児」と称される反骨的な個人との契約が多いところが目立った特徴でしょうか。因みに今年1月にシネ・ヌーヴォで観たエミール・クストリッツァ監督による極めて政治的な反骨ドキュメンタリー映画『マラドーナ』のスポンサーがプーマでした。また、2002年ワールドカップの際、プーマがカメルーン代表のユニフォームにノースリーブのデザインを採用したら、言いがかりをつけてFIFAが禁止したという出来事がありましたが、これがアディダスの嫌がらせだったことは誰もが容易に察知できました。
とはいえ、どのメーカーも搾取工場で製品を作っているというところでは大差ないといえそうですが。

ナイキ、アディダスがスポーツ界を席巻し始めるのと、グローバリゼーション、つまりネグリとハートが〈帝国〉と呼ぶ世界秩序が立ち上がる時期とが重なっているのは決して偶然ではないということをひとまずは確認しておきましょう。

さて、そのナイキ、勝手に渋谷区と結託して宮下公園をナイキ公園にするというネーミングライツ契約を結んでしまいました。誰もが分け隔てなく使えるはずの公園を有料化してテント生活者を排除するというとんでもないことが進行していますので、知らない人はぜひ以下のサイトをご覧ください。

「みんなの宮下公園をナイキ化計画から守る会」
http://minnanokouenn.blogspot.com/





ところで、サッカーについては近頃面白い本が多数出ていますが、買って読んだもので面白かったのをふたつ。

同じ町のクラブチーム同士の対決をダービーといいますが、ブルジョア階級と労働者階級、右翼と左翼、カトリックとプロテスタント(イタリアではこれはありませんが)、など様々な世俗的対立がチーム間の対立と重なっていたりするように、サッカーを通じて社会の色々な様相が読み取れるわけですが、本書はイタリア・サッカーと郷土愛の関係を人情味溢れるエピソードを盛り込みながら綴った読み物です。マラドーナの大活躍でユベントスやミラン、インテルなどイタリア北部の金持ちクラブを破ってナポリに優勝をもたらしたことが北部に搾取され続けてきた南部にとっては解放者・革命家のイメージと重ね合わされた話や、ヴェローナ市内の人口2000人の一地区の弱小クラブで年間予算が僅か5億円しかないキエーボがセリエA(1部リーグ)に昇格・定着した話など、目頭が熱くなりました。

勝利至上主義、ナショナリズム、人種的本質主義など、現在のサッカージャーナリズムを支配しているさまざまなイデオロギーを超克する新たな批評原理の実践書。ドゥルーズ=ガタリ、ネグリ=ハート、アガンベンなどの現代思想と容易に接続できます。今福さんのこだわりや、くせの強い趣味嗜好もよく窺えるところがまた面白い。

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