2013年9月18日水曜日

わにぶちみき展「Touch」 於、ギャラリーCLASS (奈良)

わにぶちさんといえば、ゆたかな色彩で塗り重ねられた画面の中央部を帯状に残し、上下を白い絵の具で塗りつぶして水平な線を表すことで知られるが、それは内と外、自己と他者、など何かと何かを画する境界線であったり、何かと何かを対照する際の基準線であるような、コンセプチャルな作風である。白という色の特性にも象徴性がある。
今回の個展でお披露目された新しいシリーズでは、これまでの路線を踏襲しつつも、ある明白な進化が窺えた。
塗りつぶす白が境界近くでは透明度が高まり、結晶状の単位が顕現。それにより境界線であることの抽象性は縮減し、その反面、風景画のようにも見えるなど具象性が微かながら増長している。
また、境界線は縦であったり斜めであったり、水平から解放されたことで、静謐さのなかに動きが感じられる絵となった。
「(絵画の平面が)境界面になることで、線が水平である必要がなくなった」とはわにぶちさん自身の言葉。

その他には白い地に言葉(文字)を連ねて線を表す、コンクリートポエトリーを髣髴とさせるシリーズも異彩を放っている。

旧作では複数のタブローが組になることの効果が大きかったが、それはタブローのオブジェとしての性格を軽視しないという姿勢によるものだろう。その姿勢はそのままに、新作ではタブロー1点でも作家の世界観を存立させうる強度が備わっている。そうして、視覚が一つの画面に滞留する時間は大幅に、それもごく自然なものとして伸びてゆく。

ギャラリーCLASS 9/11~9/29 

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。