2012年7月19日木曜日

岡田真希人 展「impatience and hopes」 於、イムラアートギャラリー(京都)


岡田真希人さんは、ロマン主義的美学の回復をご自身の仕事の目標として掲げている。
それは、啓蒙的理性、あるいは分析的理性には決して還元されえない内在的な価値を追求するという意味で、芸術が本来擁護すべきもっとも大切な価値への投企であるともいえよう。
空虚、闇、ほの暗さ、孤独、沈黙、無限、などをライトモチーフに、鉛筆画の上から透明な青い絵の具(ウルトラマリン)を塗ったこれらの作品群は、その大きな目標にいたるための方法として選ばれた、絵画としての純度を高める実践から生みだされた。

ところで、ネグリとハートは著書『〈帝国〉』において、モダニティ(近代性)には革命としてのモダニティと反動としてのモダニティという二つの相があり、産業革命以後人間を疎外してきたモダニティは後者であって前者ではないことに注意を促した(ポストモダニズムが二つのモダニティを腑分けできなかったことを批判する文脈で)。たえず反動が弁証法的運動のように覆い被さってこようと、誰かのために、あるいは見果てぬ夢のために何か新しいものを生みだそうとする力は革命的であるということを、近代性の始まりにおいて生じた出来事を例示しながら力説したのだ。
それはある種のロマン主義的な熱情と同質のものとみてさしつかえない。

薄暗い化学の実験室や航海といったモチーフを作家の意志のうちに読み解き、展開していく鍵はここにあるように思う。

そのような視点をもつことで、モダニティの再考という3.11以降われわれが突き付けられている課題ともアクチュアルにリンクするのではないか。

凪いだ海。まさに荒れんとする重い空を見詰めながら、小舟の上に一人立つ。

ART OSAKA2012での展示風景。


イムラアートギャラリー  6/9-7/21

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