2012年4月28日土曜日

井桁裕子「枡形山の鬼」 (ART KYOTO/国際会館)

京都国際会館アネックスホール32番ブース「ときの忘れもの」で展示されている井桁裕子さんの「枡形山の鬼」。

この作品は舞踏家・吉本大輔さんを等身大に写し取った肖像人形で、桐のおがくずを糊で練って塑造した桐塑(とうそ)と呼ばれる、古来雛人形などに用いられた技法によって制作されている。
だが、吉本さんをただそのまま模したというものではない。それは、異様に変形された形象というにとどまらず、吉本さんの影像を通じて、精霊らしき不可思議な存在を召喚する依り代のように思えるのだ。この作品が「鬼」と称されることの意味は多義的で、そして深い。

繊細な感覚に裏付けられた高い技術と緊張感の長期にわたる持続を必要とする、その作業工程を想像すると、気が遠くなってしまう。

悠久の時の流れの中で厳しい風雪に耐えてきた老樹を思わせる、その存在感に言いしれぬ畏怖の念が喚び醒まされた。

長く延びた異形の右手、その末端。大地の奥深くを指し示す太い人差し指。


吉本さんの存在からして、すでにこの世のものを超越している。


0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。