2012年4月29日日曜日

藤原チムチム展「特別便所」 (Gallery1/神戸・旧居留地)

神戸は旧居留地、旧チャータード銀行ビルの貴賓用トイレ「特別便所」で開催されている藤原チムチムさんの個展タイトルはそのまま「特別便所」。
展示内容は、王子動物園や伊丹市立昆虫館の協力のもとに制作された動物の排泄物標本である。

馬糞。

牛糞。

人糞。
チムチムさんご自身が排泄なさったものをDMの写真として採用。

身近な里や山の動物たちの糞。キツネの糞はノネズミの毛や歯などが未消化のまま排泄されるなど、大変興味深い。イタチの糞はひどく臭かったそうな。

昆虫の排泄物標本。ショウリョウバッタ(最上段左から二番目)、カブトムシ(その右)。三段目左からオオスカシバ、蚕(幼虫)、オオカマキリ、オオゴキブリ、ミノムシ、ダンゴムシ・・・。

マサイキリン。シカのにそっくり。粒は小さいものの、一度に排泄される量は大変なものだそうで。

ミナミシロサイ。粒がでかい。アジアゾウのはさらに巨大だったが、いい写真がとれず。

ジャイアントパンダ。

ジャイアントパンダと同じく笹を食する動物、シセンレッサーパンダ。
チムチムさんはジャイアントパンダとレッサーパンダの糞の薫りの素晴らしさをウグイスパンに譬えていた。一度じっくりと嗅いでみたいものである。

アムールトラ。肉食動物の糞の臭さはかなりのもの。
赤ポチがついている!

藤原チムチムさん。

われわれ動物はみな毎日ご飯を食べ、そして毎日でなくともウンコを排泄することで生きている。それが日常である。ところがフツーはだれもわざわざウンコを標本になどしない。
そこから、ウンコ=日常、標本=非日常、ひいては日常を非日常化する媒体としてウンコ標本を位置づけているとのことだ。
だが生物学者の学術研究のように、動物=まったき他者をただ客体化して記述するというのではなく(生物学者の生はこの限りにあらず)、その時々の体調や食生活の質によって変化する自身の排泄物を子細に観察・分類しつつ人糞標本まで制作するチムチムさんの営みは、間違いなく実存的である。

そして、われわれはウンコについて語り合える共同性を見出したとき、表情はほころび、普段膠着していたさまざまなものが溶けていくような解放感に包まれる。

それゆえ、古今東西、排泄物をめぐる随想を好んでしたためてきた文人たちが数多いることには、根拠があるのだ。

ウンコには、現前性の秩序を揺るがす大きな力が秘められているからだ。



Gallery1 4/25-4/30


※これらの排泄物標本は実物標本ではなく、すべて造形作品である。腐敗、乾燥などの劣化防止処理の困難さという問題もあるが、たとえ処理可能な場合でも新鮮な質感が失われてしまうからである。リアルな質感から喚起されるものこそが、作家の狙いなのであろう。

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