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夜のガラスをひらき
いちまいの緑のハンカチィフのなかに
消えてしまう
お前
のタンブラァ
青いキャバレェでは
リキュウルの星
が睡い眼をして誘いにくる
ボンボンにも柘榴石にも
夜がすぎていき
きのうも
あすもない手に破れていく
ジャスマンの薫り
非常に青いガラス
の上に
ほとんどエロチックといえるほどの
純粋な圓錐
を想像する
美しいセニオラ
黄色いドット
のなかで
ガラスの椅子を砕いている
お前
の際限もない純粋
2
透明な三角
のガラス
と黄色いリボン
そしていちまいの白い紙
が
純粋
な時間のすべてだ
透明な曲線にかこまれて
砂の上に光っている
貝殻
の
白い距離
金髪
の薔薇の
砂
の皿
の
またあるいは
太陽
のガラス
の紫
の肖像の
青い空間にみとられながら
レモンをよぎり
完全
な卵
の影
の固いトォンを
ほんのすこし憎んでいる
お前
の純粋
な縞のある憂愁
◆北園克衛「カバンの中の月夜」(詩集『眞晝のレモン』1954年、より)
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