片山さんの作品シリーズ"Sanctuary"の1枚。画面中央に立っているのはフランスパン。パンとは命を支える糧であり、キリストの血肉をもあらわす。
立っているパンは生きる人間を象徴しているのだろうか。それは作家自身のセルフポートレートにさえ見える。
堆くつまれた産業廃棄物(何世代も前のストレージシステム?)に捧げられたパンを画面中央に配した「Requiem」。
キリスト教において、パンは死者への慰めとして贈られる葬送の供物でもあるが、この光景は供犠(生け贄を供する儀式)のようにも見える。
立っているパンと横たわるパンとでは象徴としての意味が異なる訳だが、この二つのイメージの移行を辿るための手がかりは明示されない。
スーパーのチラシをスキャニングした池田友里さんの作品。
この世界に明確な色と形を備えた対象をスキャナーで読み込む際、デジタル信号によって肉眼では目にすることのできないイメージの転送が行われている。池田さんはそこに特別な意味を見出し、読み込まれる対象と、読み込まれた後に姿を表すイメージとの間、まさに現実を超越した次元にある移行中のイメージを視覚化する。
片山さんの写真には立つパンと横たわるパン、その二つの間の移行を意味するイメージの視覚化が省かれているのに対し、池田さんの写真では間のイメージだけが視覚化される。
片山さんと池田さん、二人の写真作家が駆使するイメージの詩学の異質性、その対照性が語るものこそがこの展覧会の見どころだろう。
◆spectrum gallery 3/15~3/26
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