薬品で腐食させたアルミ板に燃やした写真を貼り付け、絵の具で彩色した小品。このシリーズが過去の風景を閉じ込め過去のままに再帰するためのものであるとしたら、そこから昇華させたタブローは、つねに回帰しつづける時間へのしるべとなる風景を示したものであろう。それはもちろん、未来へも投げられている。日常に覆い被さらんとする虚無感を撥ね除けるために。
どの作品もすべて、作家がそこに身を置いたことのある実景がモチーフになっており、箴言とも俚諺ともつかぬタイトルが付されている。
油絵の具、寒冷紗、石膏などで描いた「昨日とまるで同じ今日」。
絵肌に凝結した無機物の粒子が、無意識裏に記憶を構成するモナドと交感し合うのだろうか。
◆spectrum gallery 3/1~3/12
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