ところが近づいてみると、赤い図形に自然と視線が合わされ、赤い図形とその他の図形がすべて異なった接し方をしていることに気づく。
すると、赤い図形を一つの単位とした、有機的な"個"が立ちどころに現れる。
離れた場所からだと無機的で没個性的な図形の集合としか思えなかったものが、局所的に"見る"という行為を通じて個性を備えたものに変貌する。この位相の差異や対照性が一つの平面から生み出されていることがわかれば、それ以上の解釈や贅言などはなにも必要なくなるのだ。あとはもう喚び醒まされる情緒に心を委ねてしまえばいい。
杉山さんのこの絵は「青い家」の母屋ではなく、本来展示場所とは想定されていなかった掘っ立て小屋に展示されているのだが、小屋には扉もなく吹きさらしなので、場違いなほど周囲の景観とは調和しない。だが、それが却って画面への意識の集中を容易にしてくれた。
これはある種の錯視芸術だと言えるのかもしれない。
◆Gallery Den mym/AIR南山城村「青い家」 Visual Sensation vol.5 3/17~4/6
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