骨
その絶望
の
砂
の
把手
穴
のある
石
の胸
あるひは穴
のある
石
の腕
偶像
の
夜
にささへられ
た孤独
の口
の
骨
ひとつ
の
眼へ
の
ひとつの
亀
の
智慧
あるひは
肥えた穴
のなか
の
恋
の
永遠
を拒絶
する
恋へ
の
図形
憂愁
の
泥
の
夢
をやぶる
恋人
の
陰毛
の
夜
の
環
その
暗黒
の
幻影
の
火
の
繭
その
幻影
の
死
の
陶酔
の
黒い砂
あるひは
その
黒い陶酔
の
骨の把手
(詩集『黒い火』〔1951年〕より)
「彼は特殊な意味の断絶方法によって、特殊な夢の世界を創ろうとしているのである。それだから、この詩に、一般の詩からうけるような何らかの論理的な結論などを予期したら、全く理解しがたいものになってしまうだろう。(中略)
しかしながら、ここで考えなければならないことは、作者自らもいうように、これは詩の新しいパターンなのであって、『夜の要素』という一つの抽象の世界なのだから、たとえそこに論理的な筋書きがないとしても、それは何らかの『意味の世界』だということである。いわば意味を拒絶した意味の世界なのである。
それだから、たとえば『骨/その絶望/の/砂/の/把手』という言葉の配置から、何の心象的反応を示しえない読者にとっては、この詩は全く無縁なものにならざるをえない。それと反対に、そこから何らかの心象的反応を経験し、さらにその上に次々と来る、さまざまな言葉によって惹き起こされる心象的経験を重ねうる人にとっては、やがてそこに、『夜』という空間の内部を形成する人間的欲望の抽象的空間を目撃することができるわけである。」
・・・村野四郎による評(『日本の詩歌25』1969年,中央公論社)
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