2012年11月19日月曜日

吉原啓太「Quad-core Processeor」 (NAMA_MEDIA/大阪市此花区・此花メヂア)


この箱はいったい何なのだろう? という謎がようやく氷解した。
先日の「三輪の家」(桜井市三輪で11/1~11/11まで開催)で始めて目にしたときには、何をどうしたって分からなかったのである。
存在感のあるこの箱は、アトリエのある此花メヂアから奈良県桜井市の三輪山の麓まで、ヒッチハイクで搬送してもらったのを、また此花までヒッチハイクで戻ってきたものだった。中に仕込まれたICレコーダーで搬送中の音声が終始録音され、展示中はその音声がずっと再生されている。中から何かヘンな音が聞こえるぞ?ってな具合で。

箱の表面にある傷や汚れは搬送中に付いたもの(搬送時にはカーボン紙でくるまれていた)。

展示室の壁には、吉原さんと交友関係のある此花アーティストたちを巻き込んだことを示す作品が箱を取り囲むようにならぶ。
搬送中にICレコーダーが記録した音をリミックスした音楽作品(那谷修平さん)、箱の表面の模様を使ったグラフィック作品(三家総一朗さん)、箱を梱包していた材を使ったインスタレーション(ボン靖二さん/下の写真)。
中でも極めつけに面白かったのは、スケーターのAraki Mizutamaさんが住むメヂア3階の屋根裏部屋までこの箱を運ぶ様子を、Ustreamで実況する映像だった(液晶モニター)。弱音や泣き言などネガティブな言葉を発し続けながらも吉原さんに付き合い、自室まで運ぶMizutamaさんの美しき友情に思わず目が釘付けになる。
しかし狭い階段を、わざわざ危険を冒してまで3階の部屋に運び上げることの意味は、依然、謎のままである。


作家を取りまく人々との友情やしがらみ、はては見知らぬ人びとの善意によって作品が成り立つということを箱の移動で実践した作品、ということだろうか。
薄汚れて帰還した白い箱は、それを収める此花メヂアのホワイトキューブと美事な相似形をなしているではないか。
箱の佇まいは、凛として美しく、にもかかわらずどこか滑稽な詩情を湛えている。

NAMA_MEDIA medias connection vol.3 11/17~12/24
此花メヂア


「三輪の家」(11/1~11/17)での展示風景。
このときは"Human Processor"というタイトルだった。


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