キャンバスにアクリル絵の具で描画した上から、白のゲルインクボールペンで点描していく。現代の画材を使って普遍的なテーマを追求しているのだと中埜さんは云う。
既に過ぎ去ったものと、未だ来たらざるものとの、不在の間隙にしか現れることのない時空。
そのような一回性の瞬間がたえず繰り返されていくことの中に、生は存在する。
だが、人の時間意識は伸びたり縮んだりするもので、かかる内的時間意識それ自体が意識にのぼる瞬間がある。
絶対的あるいは相対的な尺度によって計測可能な時間としてのクロノスに対し、生きられた時間としてのカイロス、その記憶の蓄積こそが生のよろこびやくるしみ、ひいてはゆたかさをあらわすようなあり方、それが意識にのぼる瞬間が。
中埜さんが描く白い点は、雪が降り積もっていくように、あるいはそうして降り積もった雪が溶け、蒸発して雲となり、そしてまた雨や雪となって降り注ぐように、直線的な時間も円環的な時間も、ともに包摂する、生きられた時空の象徴として可視化されたのだろう。
◆Oギャラリーeyes 5/28-6/2
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