2012年7月10日火曜日

GALLERY wks.10周年記念"wks.祭"平面作品展よりいくつか (大阪・西天満)

GALLERY wks.の10周年記念企画は無資格・無審査・無賞のアンデパンダン展!(いわゆるアンパンというやつ)。作品は即売されるため、売り切れ御免。

石山唯「BOMO」。モボ(モダンボーイの意)なら昭和レトロなスナックの名前にでもありそうだが、「ぼも」だとなぜか脱力する。

 高木智広「ちゃぶ台のマリア」。昭和戦前期のものらしい美事なちゃぶ台に聖母(おねえちゃん)が神の子(カエル)を抱く姿をペイント。
 下から眺めると、このちゃぶ台の古典的フォルムがよくわかる。松本哉が描くキャラが載っているのはこんな形のちゃぶ台だった。

岡田絵里「201273T」 。描き継がれるイメージと継ぎ足される支持体の連動が特徴。一枚の支持体を一つのコマに見立てると面白い。
往年のシュルレアリストたちによる連想絵画遊戯「甘美なる死骸」を思わせる不思議な作品。

西村有理「かたつむりえかきうた」。日本列島をめざして北上する台風に擬えられたかたつむり。かわいい! 

上瀬留衣「なまこちゃんの夢」。 「なまこちゃん」とはコラージュの基底部で涙を流す、美青年のことか。
なまこちゃんの右目から零れる涙。よくみればこれは上瀬留衣さんの顔。

つかもとよしつぐ「山水」。 液体を使った映像パフォーマンスでおなじみ塚本佳紹さんは、絵の具を凝固させた作品を。だがしかし、これは山水である。

ヤマダヒデキ「大切な物は何か考えてみる 6」。 黒い液体のプールに半分沈んだバラの花。地が漆黒なので透明アクリル板は鏡になる。だから、花を眺めている己の姿と否応なく向き合うことに。大切なものとは・・・?と。福永宙さんの写真作品も写り込んでいる。

伊東恭子「3月の紫陽花」。 今、進行中の革命にも冠された紫陽花は6月を代表する花。だが、これは3月の紫陽花。なぜ3月なのだろうか? はなぶさは三つだと初見の印象では思っていたが、四つにも五つにもみえる。

木内貴志「関西電力ビル前で牛乳を飲む」。 表面が鉄骨で蔽われた関電ビルディング、"No nukes! I want to drink milk."(清志郎の歌詞の一節)、明治のパック牛乳を構図に収めた写真作品である。アンパンに一番合う飲み物は牛乳である!、と叫んだところで誰も異論を差し挟むまい。だがしかし、牛乳パックには「がんばれニッポン」「明治」「お■しい牛乳」の文字が・・・。

グンジョラクダさんの 作品の下、床の角にヘンなものが・・・。

なんだこりゃ?と思ったらロッテ「パイの実」の箱だった。中から妙なノイズが響いているような気がするのだが、気のせいか?
(これは髙須健市さんの作品と判明。中にはiPhoneが仕込まれていた:追記)

アンデパンダンIndependantsとはフランス語で「自主独立」を意味し、1884年にフランスで官設の美術展(サロン)に対抗して開かれた無資格・無審査・無賞の美術展が起源である。日本では1947年の日本アンデパンダン、1949年の読売アンデパンダンが毎年積み重ねられることで戦後美術における坩堝のような役割を果たし、出品する若者たちの間でアンデパンダン展はいつしか「アンパン」と称ばれるようになった。
無資格・無審査であるということは、そこで求められるのはただ創造と発表への情熱だけであり、それはすなわち無名の表現者にも広く門戸を開くということであった。大家の作品も、駆け出し作家の作品も、素人の趣味的作品も等しく並べられることで、カオスの中から新しいムーブメントが生まれる温床となったのだ。そこで生産されるのは、ここから何か新しいことが始まるのではないかという期待感であり、それは私たちが希望と呼んでいるものの別のあり方なのかもしれない。

それだけではない。ひとつひとつの作品を鑑賞する際、何をもって面白いとするか?何をもって良い作品とするか?という美学の規準が作品それぞれに異なるため、作品から作品へと目を移すとき、意識が規準としているものもまた移行する。
それは、美術であること、同時代であること、一流であること、などを条件付けている枠組み、すなわち美学的体制を揺さぶる潜勢力の秘められをも意味するのである。

ここにこそアンデパンダンであることの最大の意義がある、といっても過言ではない。


wks.祭はオーナーの片山さんによって壁ごとに趣向や雰囲気の異なる作品がグルーピングされているので、作品同士が互いに際立ち引き立つような並びとなっており、鑑賞という行為の驚きとよろこびを堪能できる展覧会である。
作家の営為と搬入時の偶然的要素、そして編集的センスが絶妙に絡み合っているのだろう。



【出 展 作 家】
鍵井保秀 / 尾柳佳枝 / 望月麗 / 中村由香/ 保田篤 / 中新井純子 /伊吹拓 / 西嶋みゆき / 中尾暢明 / 村田真紀 / m a c o m o / 安藤智 / 木内貴志 / 石山唯/ しまだそう / 中村協子 / フルタミチエ / 高木智広 / 金石千恵 / 赤土浩介 / 岡田絵里 / 天野萌 / t k 4 m / 西村有理 / ミヤザキミホ / 板垣亜矢/ 千光士誠 / グンジョラクダ /蛇目 /上瀬留衣 / つかもとよしつぐ / s a c c o / 上村亮太 / ハザマヨウイチ/ 田中加織 / 和田武信 / 谷口和正 / 小池芽英子 / 安藤吉準 / 越野潤 / 冬耳 / 佐藤有紀 / 田村仁美 / D A M A / 城戸みゆき / ヤマダヒデキ / 山岡敏明 / 福永宙 / 久保昌由 / 近藤寿美子 / 伊東恭子 / 荒木晋太郎 / 松井沙都子 / ムラギしマナヴ /鮫島ゆい / 照山淳也 / 明石真理恵 / 西嵜久美子/野寺摩子 / 関郁美/ タニカワアユ / 西本紀文 / 高須健市 / 片山和彦 / 以上6 4 名

(売れた順に余白ができるので、そこを埋めるべく新たな出展者がふえるかも!?)


ギャラリー wks.  7/5~7/28

※9月には立体作品展を、同じくアンパン形式で開催するとのこと。

2 件のコメント:

  1. 『かわいい!』をありがとうございます。
    かたつむりえかきうたの作者です。
    下の方にひっそり展示していたのに、丁寧に観て頂いてうれしいです。

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    1. 西村さん、コメントありがとうございます! とってもかわいかったですよ!

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