観音様というのは古来、悩める衆生を救済するため様々な姿をとって垂迹するもので、ひろく民衆信仰の対象となってきました。
今回紹介させていただくのは、ストレスに蝕まれた現代人にとっての救済の形というものを、五人編成の戦隊ヒーローになぞらえて偶像化した現代版「観音様」の展覧会です。
五体の「観音様」はすべて陶による造形で、一部のものはミクストメディアになっています。
リーダーとおぼしきマッチョな「馬頭赤観音」・・・競馬に代表されるギャンブルの「観音様」。弥生土器か土師器を思わせる素焼の杯の上に立っています。馬頭観音のパロディでしょうか。
「3ピース青観音」・・・音楽依存を象徴。
「グラビア桃観音」・・・これが何を象徴しているのかは見たまんまですね。
セクシーな谷間は背中にも。
「カンパイ黄観音」・・・気は優しくて力持ち、でも食いしん坊な黄レンジャーを思い出しました。アルコール依存には気を付けねば、と身につまされる思いがしました。
「マリファナ千手観音」・・・薬物依存を象徴した微妙に緑な「千手観音」。造形的な面白さはこれが他を圧倒しています。
髑髏にしがみつく「観音様」のお顔には麻の葉っぱ模様。
この展覧会のタイトルでは、観音様が「観音様」と「」(鉤括弧)にくくられているところが鑑賞のポイントであるように思いました。敬虔な信仰者からすれば、これらはすべて悪魔だか魔神だかといった感じになるのでしょうか。仏教的には「魔羅(マーラ)」というやつです。
とはいえ、誰もが多かれ少なかれ何かに依存するのが自然ともいえる現代社会において、欺瞞でもなければそんな超越的な審級から見下ろすことなど、そうおいそれとはできないもの。
現代の世界に対する鋭い問題意識をお持ちの作家として綿引恒平さんの名前は記憶にありましたが、昨日ついでがあって立ち寄っただけの射手座で思いも掛けず素晴らしい作品を堪能することができました。
関西にお住まいの皆さんにはぜひ足をお運びいただきたいと思ったのに、残念ながら今日(12/5)が最終日。もう少し早くいくべきだったと後悔・・・。
この「観音様」展はVol.2とあるので、Vol.3があるのかどうか気になるところですが、いずれにせよ今後の展開には大いに期待したいと思います。