骨片を桐の木の下に埋めると、一本の茸が生えた。
茸はいい匂ひがする。
どこか骨の匂ひのするのが、いひやうなく懐かしかつた。
わたしは骨片を舐めるよりも、この一本の茸の匂ひを嗅ぐ方に傾いて行つた。
◆詩集『戦争』(1929年,厚生閣書店)所収
北川冬彦の詩ではこれが一番好き。短い作品なので、評言は控えよう。
彼(本名・田畔忠彦)の墓は多磨霊園の西に奥まったところに位置する(23区2種8側)。すぐ近くには同じ時代に生を享けながら詩人としては全く対照的な生き方死に方をした、小熊秀雄の墓がある(24区1種68側)。北川作品の優れた批評者でもあった村野四郎の墓もまた多磨霊園にあるが、こちらは多磨霊園のメインストリート「名誉墓域通り」から東に入った、比較的浅い場所(8区1種14側)。
母が縁あって、北川冬彦さんのお墓を探しておりました。詳しい場所まで分かって本当に助かりました。ありがとうございました、
返信削除このような記事でもお役に立てて嬉しく存じます。
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