2013年2月26日火曜日

京都精華大学卒業制作展より、稲野純也「衝動」(京都市美術館本館)

 あの池田模範堂の名薬「ムヒ」を、精巧に、巨大に再現。ブッ飛んだ作品がごった返す立体造形のフロアでもひときわ強烈な存在感を放つ。意表を突かれた哄笑のあとに洩れ出してくるのは、感心の溜め息。
造形は鉄、文字はマスキングテープを使った手作業によるペイント。だが二本のうち、立っている方のチューブの裏側、製造者・成分などを表示した部分はペイントが間に合わなかったためプリントしたシールを貼り付けている。また、使用期限年月の刻印も間に合わなかったようだ。
力業と繊細さ、暴力的な衝動と腰が抜けそうなほどの滑稽さ、完璧への意思と挫折、それらが綯い交ぜになったこの巨大「ムヒ」は美事というほかない。文字通り、無比である。

稲野さんは卒業後、制作を続けることはしないそうだが、だからだろうか、このたった1回の展示に精魂のすべてを、存在のすべてを懸けた者だけがなしうる壮絶な魂の爆発を感じた。まるで打ち上げ花火のように。
作品に意味があろうがなかろうが、いずれにもせよ、ここには意味を超越した崇高さがあった。

◆2/20~2/24

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