2013年7月5日金曜日

南野馨 展 於、ギャラリー白3 (大阪・西天満)

いくつもの切り子面からなるパーツが組み合わさった陶製の正二十面体が、三重の入れ子構造になったオブジェ。
正二十面体とは三次元空間における最大面数の正多面体であり、作品化されたそれは多数の平面によって構成される球状体のようなものである。
作品における平面とは一般にはアウラを放射する顔であるとともに、主体がイメージを投影する対象表面としての役割を果たす。
南野さんの作品は三重の入れ子構造に加え、見えたり隠れたりするいくつもの切り子面の存在が視点の移動による多彩な図形の顕現を可能にし、そこにイメージとアウラとが関係する場を生じさせる。

一番外側の黒い層は割り引かれたパーツによって空間へと開口され、真ん中の白い球体を抱擁する形になっており、開口部からは白い球面が露出。さらにその白い球体の内面には平面構成の黒い正二十面体が密着して核に据えられる。

パーツは肉抜きされ、丸や三角の穴からは様々な角度で中を覗けるようになっているが、向こう側まで見通すには特定のポイント、特定の角度を探らなければならない。

そんな南野さんの作品を詩的に読み解くとするならば、まずはプラトンが五つの正多面体のそれぞれに象徴的意味を割り当てたことが想起される。正四面体=〈火〉、正六面体=〈土〉、正八面体=〈空気〉、正十二面体=〈水〉、というように五つの内の四つを西洋において万物を構成すると考えられた四大元素の象徴とし、最大面数の正二十面体を四大元素を超越した〈宇宙〉の象徴と考える説である。正二十面体が宇宙を象徴するのは、それが完全なる美質を備えた立体であることによるのだろう。
しかしプラトンの所説を知らなくても、この作品が焼き物であるというだけで土・水・空気・火の四大元素すべてが関係していることが理解できるわけだから、そこから世界の喩になりうるし、点・線・面が複雑に組み合った入れ子構造であることは世界観の喩にもなりうる。作家の世界観が提示されるものとしての芸術作品それ自体が世界観の喩にもなるという重層性は、オブジェそのものが重層性をもった構造であるだけに興味深い。
また緻密な設計によって制御困難な素材を制御し、精確に組み上げた構造物であることも、なにかしらシンボリックな想像を促してくれる。

とはいえ、説明的なものや有機的なものの一切が消去されているため、伏蔵されたものへの思惟や解釈は無限に広がってゆく。


ギャラリー白3 6/24~7/6

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