2017年11月26日日曜日

中島一平 Live drawing「ここからの交信」(2017.11.19/コンテンポラリーアートギャラリーZone)






私が初めて中島一平さんの作品と出会ったとき、絵の具の色、使用する刷毛、ストロークの作法、などなど数多くの制限をかけた条件下で分厚く塗り重ねられた油彩のタブローに深く魅了された。それは、色彩と形象、そして物質としての存在感から空間の多層的なあり方、その現れを図るスタイルだった。視覚を通じて認知される空間が、そのまま時間の多層性をも表象していることがほどかれてゆく、作品を前にした対話が私にとってのはじまりだった。哲学的かつ詩的な・・・。
制限とはもちろん、到来するものの自由のために一平さんが自らにかけたものにほかならない。

一平さんはその後、神戸のアトリエ2001の壁面で行ったライブペインティングを経て、自らかけた制限を解くことになったという。

より自由に。

以後、私たちが目にするのは油彩画ではなくアクリル画になったのだが、油彩を手放したわけではないことは、ライブを通じて現れつつある絵の、その現れ方に一平さん独自の造形論理が通底していることで窺えた。

しかし以前と違うのは、哲学的であるよりも、まずは詩的な出来事として現れることであろうか。


今回のライブのために色をつくって名前を付ける基礎的な実験を積みかさねていたことを画帳とともに披露してくれたのは、この出来事の詩的な一面を語っているようで興味深い。
写真は〈西域オレンジ〉。色名、絵の具のレシピに加え、色にまつわる言葉が綴られていることから、色が物語を内包していることがわかる。
〈西域オレンジ〉は今回のライブに使った赤が生成される前に試行された色なので、本番で使用された赤とは異なっている。その赤の名前は「秘密の赤」としか語ってくれなかったのだが、緑は〈天使グリーン〉と名付けられていた。

〈明かしえないもの〉を大切にする一平さんの倫理と論理が凝縮されたライブドローイングである。

〈持続する時間〉から〈生起する時間〉、そしてまた〈持続する時間〉へ。
かつてこの場に留まり、通り過ぎ、さらにはこれからやってくる無数の生の時間へと、持続的に連接されてゆく。

ここにあるのは、未知なるものへの無条件の信頼なのであろう。

ギャラリーがあるのは、開設から60年が経過した古い市場である。


コンテンポラリーアートギャラリーZone 2017.11.18~12.3

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