2012年12月9日日曜日

加世田悠佑「,1秒先の観測点 -コンマいちびょうさきのかんそくてん-」 於、Factory Kyoto

budと名付けられたキューブ状のオブジェ群が配された暗闇の中を、懐中電灯をもってめぐるというインスタレーション。
コンクリート製のキューブにはどれも穴ぼこがあり、それは弾孔のような、穿孔のような、あるいは岩窟や坑道のようにも見える。
穴ぼこの底からは、何かが芽ぐむようにせり出している。
どうやらそれはガラスのようだ。

 コンクリートもガラスも、近現代文明を構成する代表的な建築資材であり、それゆえ身のまわりにありふれたものである。この角度からライトを当てると、まるで都市の廃墟を思わせる影がなびく。

 手に載せると重く、掌に冷たさがしみわたるが、眺めていると温かみが体の内側からこみ上げてくる。そのとき、無機物であるはずのガラスの芽は、ゆたかな表情を湛えだす。
(手に取ることを推奨される、スペース中央に積まれた5㎝立方のbudたち)
ガラスとは、壊れやすく繊細な性格でありながら、酸によってもアルカリによっても腐食しないつよさを備えた物質である。
光を受けたガラスの、やわらかくしなやかな芽が生気的に放つアウラは、視線をやさしく引き寄せ、ほどよい位置で意識とつりあう。
ここではアウラの属性である引力と斥力とが、絶妙な関係を保っているようだ。

すぐれた象徴性と、豊潤なイメージの詩性を感じさせる加世田さんの作品は、他者の感性に一方的に覆い被さる〈こけおどしのサブライム〉とは全く別の志向性に貫かれている。
その、柔和なる美学・・・。


Factory Kyoto 11/30~12/9 
加世田悠佑展「,1秒先の観測点」(小島健史キュレーション)


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