2012年3月17日土曜日

西嶋みゆき  (gallerism in 天満橋/gallery CLASS)



「ほとりのまにまに」と題された平面作品。
木版で金魚の絵を刷った雁皮紙(がんぴし)を五枚重ねにしている。この写真画像では再現できないが、一枚一枚の雁皮紙には紙を透明化する処理が施されているため、重なり合った金魚の群れの奥行き感が、光の加減によって変化する。

「ときはのはな」
大川が臨める窓には、金魚掬いのポイに「ほとりのまにまに」と同じ版木で刷った雁皮紙を二枚貼り合わせたものが、まるで群れをなして泳ぐ金魚のように配されている。作品に付されたタイトルにも複数の意味がかけられ、言葉とモノとの戯れを通じて様々なアナロジーを促す。

これがオタマジャクシにも見えるのは愛嬌である。

そこから草野心平の有名な詩「Q」を連想(笑)。この詩は岩波文庫版『草野心平詩集』に収録。


複製としての版画とはいうものの、手作業による刷りという行為はどれも一回性のものでしかない。つまり、それらは常に差異を伴いながら反復するという営みなのである。そこから、ドゥルーズの『差異と反復』がすぐに思い浮かんだのだが、優れた表現行為に内在する論理が言葉のパレットから自然に引き出されてきたようで、とても心地のいい鑑賞体験になった。まるで引き合うような感覚で。

西嶋さんは金魚の影像を彫った同じ版木を様々な作品に使用し続けているのだが、その持続的な反復から永遠のイメージ/イメージの永遠へ、と想像力は飛翔していく。

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夜、ビルの外から。






gallerism in 天満橋 (3.16~3.21,京阪シティモール)

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