作家・竹村沙織さんは、日々あるがままに描画を続けるという。一日数時間の作業で一枚を仕上げるのだと。作品に付けるタイトルになる、その時々の感情や思念を表す言葉は、描画の途上で立ち現れ、そして仕上がりとともに言葉をなすのだろう。竹村さんの絵と言葉との関係は、すぐれて詩的である。そして厳密に観察するにしても、上下左右は仮のものでしかないと思えるほどに、どの角度から見つめても絵が絵として成り立っている。
これを、例えば絵画におけるオートマティスムと言ってみたり、アールブリュット的であると言ってみたりしてもあながち間違いではないかもしれない(それらの術語を本来の意味に理解しているのであればである)。だが、そのような美学・美術史的な参照項を引っ張り出してみた途端、何かが処理されてしまうことに後ろめたさを感じてしまうほど、崇高な精気に満ちているのだ。
もちろん、竹村さんの作品にどのような名辞を与えようと、それは鑑賞者の自由である。それでも、アウラとしか言い得ない何ものかがほとばしるさまを感じられるとしたら、見ることを通じて、あるいは作品に囲まれた空間で過ごすことを通じて、その生命力が生き生きと伝わってくるだろう。そのとき、何かが感応しているはずである。
外部との境界のないこのギャラリーにおいてその感覚を味わうことは、よろこびとなるに違いない。
◆竹村沙織展「これまでと、これからと」 コンテンポラリーアートギャラリーZone 2015.4.13-4.23
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