両側から力がせり出し、せめぎあうかのような、尾根のある作品は人と人とが一対一で向き合う時に生じる、感情のぶつかり合いのようでもあり、穏やかな心のふれ合いのようでもあり、また愛の駆け引きのようでもある。
ここで尾根のある「花瓶」が群れとして展示されると、それがそのまま人の一群を表象した静物として、見る者の想像力を楽しませてくれる。
実用品とオブジェの間、生物と無生物の間、有機物と無機物の間、植物と動物の間、生者と死者の間、エロスとタナトスの間、作る人と見る人・使う人との間、モノと言葉の間……
谷内薫はあらゆる対極的な物事や価値尺度の間に、作品を定位させることができる作家である。
そして自我の超越性、主体の形而上学に固執していない彼女のしなやかさは、今は陶という媒体に載せられ現前しているイメージが、これからも自在に変成し、夢幻のように展開していくことを期待させるだろう。
作品の肌にある無数の襞から、そこに世界が折りたたまれている〈襞〉、というドゥルーズの概念を連想すれば、アクチュアルな問題系へと通路を開くこともできる。そのような特異な経験と理性に基づく問題意識にさえもナチュラルに接続するポエジーは、私を魅了してやまない。
京都文化博物館別館・アートンアートギャラリーにて、5/9(日)まで。
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