「うつつの夢」と題されたタブロー。
抽象画でありながら、これが風景を描いたものであるということは、画面に水平軸と垂直軸があり、それがそのまま上下左右を表している(であろう)ことから容易に察することができる。
とはいえ、それが現実の風景をただ抽象的に捉えた絵ではない、ということもすぐに了解できる。
作家によると、画面下部に横たわる淡い色の影像は女性なのだそう。なるほど、向かって右側が頭、左に足を投げ出し仰向けに横たわっている。そして画面上部に描かれた空から何かが漏斗状に絞られ、女性の胎内へと入っていく様子が、絵の具の滴りによる控えめな演出を伴いながら詩的に表されている。また、その逆に何かが女性の体から放出されているようにもみえる。
淡い色の影像は人間ではなく、湖か泉のようにもみえるし、豊饒な実りをもたらす畑のようでもある。
視点の置き方ひとつで浮かび上がる形象が様々に変化するというのは抽象画を鑑賞する醍醐味であるが、この絵は、空と大地とが流動する物質によって交わっている様子を表したものと、ひとまずは解釈することにした。
その場合、大地が女性の身体によって表象されていることになる。
HANARART http://hanarart.main.jp/index
三輪エリアでの開催は10/23(日)まで。
HANARART2011三輪会場でも展示されていた80号の大作「うつつの夢」は2011年12月、橘画廊でも展示され、HANARARTの時には建物の暗さと距離のために判別できなかったものへの気づきがあった。支持体はベニヤ板。アクリル絵の具と油絵の具による彩色のみならず、鋭利な釘状のものでなされたスクラッチングも見受けられた。
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