2011年10月22日土曜日

ナカタニユミコ  (HANARART/郡山城下町・杉山小児科医院)

大正10年(1921)頃に築造された杉山小児科医院(登録有形文化財)を目にした瞬間、建物の美しさに惹きつけられた。均斉のとれた木造の洋館で、屋根を飾る尖塔や軒の装飾が大正ロマンを彷彿させる。
この建物を継承し、修繕を重ねて大切に守ってきた院長の努力には、ただただ敬服の外はない。



ナカタニさんの作品は1階待合室の窓に。



待合室の内側、九つの窓枠の一つ一つに光を透過する薄い二枚の布であしらわれた作品が掛けられている。
奥(外)側の布には白の素地に黒い線だけで形が描かれ、手前(内)側の布は淡くも鮮やかに彩色され、二枚が重なることで花のイメージが形成される。そして人の出入りやサッシの隙間から入る外気などによって室内を対流する空気が薄い布を微妙にゆらめかせ、それによって色と線との関係もまたゆらめく。

人が、ある事物を視覚によって捉えるとき、線で知覚する場合と色で知覚する場合とがあるが、その対照的な二つのあり方がこの作品を方法的に基礎づけていることは興味深い。




(部屋の照明を灯した状態)

天候の変化や時間の移ろいなど、光の射し方、部屋の明るさなどによって印象は変化する。あるいは作品を室内から見るか屋外から見るかによっても、また異なってくる。

夜になると奥側の布に描かれた黒い花の輪郭は闇に溶け込み、色が鮮やかに浮かび上がる。

(夜/杉山満美子さん提供)

いつかどこかで見た景色や事物が無意識的に記憶に堆積していく、その個々のイメージを意識的にトレースし再構成することで作品化する、この若い作家の活躍をこれからも見守っていきたいと思う。

作品が開示する、「未視の花畑」には、どんな花が咲くのだろうか。




郡山城下町での開催は10/30(日)まで。





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